唐の詩人・賈島(かとう)も、不肖・加藤も、苦吟派なので推敲を重ねます(^0^;)
今回変えた部分は赤字にしておきます。

慶祝梅蘭芳藝術大師誕辰一百三十周年
舞剣散花銜羽觴
婆娑宛転又璆鏘
亭台唱尽人哀楽
仿佛観音現十方

仄仄仄平平仄平
平平仄仄仄平平
平平仄仄平平仄
仄仄平平仄仄平

剣を舞はし、花を散じ、羽觴を銜ふ
婆娑たり、宛転たり、又璆鏘たり
亭台、唱ひ尽くす、人の哀楽を
仿佛たり、観音の十方に現はるに

ケンをマわし、ハナをサンじ、ウショウをクワう
バサたり、エンテンたり、またキュウソウたり
テイダイ、ウタいツくす、ヒトのアイラクを
ホウフツたり、カンノンはジッポウにアラわるに

【大意】
ある時は剣舞の虞美人。ある時は花をまく天女。ある時は酒杯を口にくわえる楊貴妃。
婆娑として起舞し、宛転として歌い、飾りは優雅に鳴る。
舞台の上で、人の喜怒哀楽を唱い尽くすそのさまは、
まるで「十方世界の全てに姿を現す」観音菩薩のようだ。

【現代中国語訳】
有时,他是舞剑的虞姬。有时,他是散花的天女。有时,他是口衔酒杯的杨贵妃。
婆娑起舞,婉转地唱戏,饰品发出优雅的响声。
他在舞台上演唱人间的所有甜苦辣。
仿佛他是“十方世界现全身”的观音菩萨。

スクリーンショット 2024-10-20 152633


【自注】
舞剣散花銜羽觴:梅蘭芳は、『覇王別姫』では虞美人の激しい剣舞を、『天女散花』では天女の優美な歌舞を、『貴妃酔酒』では楊貴妃の妖艶な酔態を演じた。
羽觴:ウショウ。羽のようなおしゃれな取っ手がある杯。李白『春夜宴桃李園序』「開瓊筵以坐花、飛羽觴而酔月」。梅蘭芳は京劇『貴妃酔酒』では「臥魚聞花」「銜杯下腰」などが見せ場になっている。
婆娑:バサ。舞う人の姿や衣装が美しくひるがえるさま。『覇王別姫』の虞美人は「西皮二六」のふしまわしで「歓君王飲酒聴虞歌、解君憂悶舞婆娑」云々と歌う。の歌詞に「」とある。
宛転:エンテン。声がなめらかなさま。形や動きがゆるやかな曲線を描くさま。ここでは『天女散花』の歌舞。
璆鏘:キュウソウ。玉や金属がシャリシャリと鳴り響くさま。歌や演奏の音色が美しいさま。ここでは、『貴妃酔酒』の楊貴妃の玉飾りがシャリシャリと鳴り、歌声や伴奏の音色が美しく、また梅蘭芳の雅号が「綴玉軒」であること、など様々なイメージを重ねる。
亭台:テイダイ。あずまや、うてな。ここでは、古い時代の開放式舞台の古典的表現として使う。
仿佛:ホウフツ。「彷彿」と書くのは俗字。「髣髴」とも書く。ここでは詩の遊び心で、あえて仏教的な漢字「佛」(仏)を含む擬態語「仿佛」を使う。
十方:ジッポウ。あらゆる方角。観音菩薩(観世音菩薩、観自在菩薩)の徳を詠んだ偈(げ)、『妙法蓮華経』観世音菩薩普門品第二十五「十方諸国土、無刹不身」(観音菩薩は、宇宙のあらゆる国土において姿を現わさない場所はない)をふまえる。また『無門関』第四十六則「百尺竿頭須進歩、十方世界全身」(百尺の竿頭にすべからく歩を進むべし、十方の世界に全身を現ぜよ)もふまえる。

【参考 簡体字】
庆祝梅兰芳艺术大师诞辰一百三十周年
舞剑散花衔羽觞
婆娑宛转又璆锵
亭台唱尽人哀乐
仿佛观音现十方

qìng zhù méi lán fāng yì shù dà shī  bǎi sān shí zhōu nián
wǔ jiàn sàn huā xián yǔ shāng
pó suō wǎn zhuǎn yòu qiú qiāng
tíng tái chàng jìn rén āi
fǎng fú guān yīn xiàn shí fāng


【参考 繁体字】
慶祝梅蘭芳藝術大師誕辰一百三十周年
舞劍散花銜羽觴
婆娑宛轉又璆鏘
亭臺唱盡人哀樂
仿佛觀音現十方