久しぶりに北京に行ってきた。
三泊四日の駆け足の滞在で、知り合いを尋ねる時間も無かった。

中国の南方は大雪だが、北京は快晴で、覚悟していたよりは暖かかった。体感温度は、東京とそんなに変わらなかった。

前門の大通りの両脇は、大規模な改修工事中だった。
オリンピックに間に合うのか、と、ちょっと心配になった。

巨大な銀色のUFOのような、国立歌劇院の周囲の道路も、きれいに整備されていた。
しかし、国立歌劇院のすぐ近くの一角には、依然として昔ながらの古い胡同も残っていた。
経年変化で劣化した屋根瓦をつきやぶって生える雑草、くみ取り式の公衆便所、練炭のにおい・・・
そんな胡同が、現代的な道路のすぐ裏に、まだ残っている。
私は、北京のひなびた雰囲気が好きなので、ちょっとほっとした。

上海にくらべると、北京は田舎の町だ。
もちろん、良い意味で。
週末でも夜は、ごく一部のエリアをのぞき、北京の夜は暗く、人通りが少ない。
高層ビルも、上海にくらべればずっと少ない。
オリンピックに向けての区画整理や再開発も、とりあえず、めどが見えてきた。
当局が急激な地上げをあきらめたエリアも、けっこう多い。
私は、昔ながらの胡同の雰囲気が好きなので、これはけっこうなことである。

例のギョーザの件は、中国では、全然話題になっていなかった。
日本のテレビなどでは、街頭インタビューで中国人にこの事件を聴く映像が流されている。
あれは「やらせ」とまでは言えないにしても、北京の実態とは、かけはなれている。
一般民衆は、ネット・ユーザーは別として、ギョーザ事件を知らない。
新聞やテレビで報道しないからだ。

それにしても、中国での日本のアニメの人気は、たいしたものである。
テレビでは「網球王子」という番組をやっていた。
日本の「テニスの王子様」というアニメの、吹き替えである。

西単商場の上の階には、中野ブロードウェイそっくりの店があった(規模は小さいが)。
日本の漫画やアニメのキャラクターのフィギュアを売っていた。
まあ、東京都中野区と西単のある北京市西城区は「姉妹都市」の関係を結んでいるから、ま、いいか・・・

飛行機の中では、イギリス映画「エリザベス:ゴールデン・エイジ」を見た。
けっこう面白かった。
これから見る人もいると思うので、ネタばらしはしないが──
イギリス史にも「神風」はあったのだ、あの映画を見ると。