来年の年賀状用に、漢詩の七言絶句を作ってみました。

題猿猴捉月圖 猿猴捉月の図に題す
水涵月影皎於眞 展轉獼猴盡喪身
我不愚蒙窺井底 遙看惡相是何人
我不愚蒙窺井底 遙看惡相是何人
水 月影を涵せば 真よりも皎し
展転せる獼猴 尽く身を喪ふ
我は愚蒙ならず 井の底を窺ふ
展転せる獼猴 尽く身を喪ふ
我は愚蒙ならず 井の底を窺ふ
遥かに悪相を看る 是れ何人ぞ
(エンコウソクゲツのズにダイす。カトウトオル。
ミズ、ツキカゲをヒタせば、シンよりもシロし。テンテンせるビコウ、コトゴトくミをウシナう。ワレはグモウならず、イのソコをウカガう。ハルかにアクソウをミる、コれナンピトぞ。)
大意は――水に映る月は、本物よりきれいだ。愚かなサルたちは幻の月に手を伸ばし、一蓮托生で自滅した。おれはそれほどバカじゃない。で、井戸の底をのぞいた。ん? 遠くに凶悪な顔が見える。あいつは誰だ?
私も含めて、現代の人間サマは、そこにある現実よりも、加工されたデータやネットの情報に踊らされている気がします。
水面に映った月をてっきり本物と思って取ろうとして落ちたサルたちのことを、私たちは、笑えないかもしれません。
ちなみに、昔の人の「猿猴捉月図」(水面の月をてっきり本物と間違えて、手を伸ばしてつかまえようとするサルの絵)では、おおむね湖の水面が描かれてますが、仏典の原文では、井戸の中の水に映った月です。
また「猿猴捉月図」の絵で描かれるサルの数は、一匹だったり、群れだったり、絵師によってまちまちですが、仏典の原文では500匹の大小さまざまなサルたちです。
【若干の自注】
「展転せる獼猴」は、『僧祇律』七の原文の表現をふまえる。
「井の底を窺う」云々は、『呂氏春秋』の「子高窺井」の故事をふまえる。
★展轉獼猴=『僧祇律』「・・・展転相捉、小未至水、連獼猴重、樹弱枝折、一切獼猴堕井水中」
★窺井底=『呂氏春秋』「・・・列精子高因歩而窺於井、粲然悪丈夫之状也」

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