【原文】
雙面手風琴道心得 六箇條
一、音樂は兵法なり。攻心爲上。
一、貫中久を旨とす。音色は箭、樂器は弓、心は的なり。
一、情況第一、伎倆第二、道具第三。運も實力也。
一、雅俗自在。俗を用ゐて俗を離れよ。雅を脱けて雅を用ゐよ。
一、構へありて構へ無し。歩奏、舞奏、臥奏も厭はず。
一、ひとたり。一人、人為り。道は己と樂器に尋ねよ。
右ノ心得、話半分ト 思フ可シ

【読み方】
ソウメンテフウキンドウココロエ ロッカジョウ
イチ オンガクはヘイホウなり。ココロをセむるをジョウとナす。
イチ カン・チュウ・キュウをムネとす。(ネイロはヤ、ガッキはユミ、ココロはマトなり。)
イチ ジョウキョウダイイチ、ギリョウダイニ、ドウグダイサン。(ウンもジツリョクナリ。)
イチ ガゾクジザイ。(ゾクをモチいてゾクをハナれよ。ガをヌけてガをモチいよ。)
イチ カマえありてカマえナし。(ホソウ、ブソウ、ガソウもイトわず。)
イチ ひとたり(ヒトタリ、ヒトタり。ミチはオノレとガッキにタズねよ。)
ミギのココロエ、ハナシハンブンとオモうベし。
【現代語訳】
コンサーティーナ道 六か条
〇音楽は兵法である。(「三国志」の馬謖が述べたように、人間の)心を攻めるのが最上の戦いかただ。演奏の目的は、人間の心をつかむことであり、音を放出することではない。どんなに良い音を奏でても心をつかめねば意味はないし、悪い音でも心を感動させられれば成功である。)
〇(演奏は、和弓の日置流と同様)「貫・中・久」つまり「インパクト、命中率、持久性」の3点が大事である。(音色はいわば矢であり、楽器はいわば弓であり、心はいわば的である。演奏を聞く人の心は、ガードが固いうえに常に動きまわるという、やっかいな的だ。相手の心の殻を突き破り、相手の心のツボに命中し、しかもそんな演奏を機関銃のように続けられるようにしなさい。)
〇(演奏で自分や相手の心をつかめるかどうか。勝敗を決するのは、演奏するときの)情況が第一、腕前は第二、道具である楽器の性能は第三である。(運も実力のうち。また、音楽に飢えている人にむかって演奏したり、楽器がよく響く場所で演奏すれば、少々下手くそでも、楽器が安物であっても、相手を感動させることができる。)
〇雅と俗のあいだを自由自在に遊ぼう。(俗気を離れたいときにお上品ぶると、かえって俗物っぽくなる。低俗と優雅の両方を研究してうまく使えば、優雅の罠にはまることもなく、また、俗気にまみれることもない。)
〇(演奏の極意は、剣豪の宮本武蔵が剣術について述べたように)「構えあって構えなし」である。(情況に応じて、歩きながら、踊りながら、横たわりながら弾いてもよい。楽器の持ちかたとか、運指法などの定石は、あくまでも目安にすぎない。)
〇孤独も人間味のうちだ。(古語の「ひとたり(一人)」は、人間であるという意味の「人為り」と、アクセントは違うが、同音である。歩むべき道でわからないことがあったら、まずは他人とか先生にではなく、自分と楽器に質問してみよう。コンサーティーナは、旋律と和音伴奏を自分ひとりだけで同時に演奏できる「自己完結楽器」でもある。)
以上の心得は、話半分だと思ってくださいね。
※コンサーティーナ(concertina 双面手風琴)という楽器については、こちらのサイトをどうぞ。
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