きたる1/18(木)に、福井市で漢詩の読み方についての講演をする予定です(詳細は当ブログのこちらの記事)。ふつうの漢文訓読による詩吟だけでなく、明清楽や琴学の曲で漢詩を歌うやりかたとか、平仄や四声を加味した日本漢字音で漢詩を字音直読するやりかたなどについても、実演つきで説明します。
漢詩のさまざまな音読法 (無音) パワポビデオ
以下、自分の備忘用に、メモしておきます。
平山久雄先生による、六朝から唐代中頃に至る間の標準的な発音における声調調値(推定)。最低音を1、最高音を5とする五度制による表記で示す。“*”は推定音であることを示す印で、上声の推定音の"*"と”35”の間の“’”は「緊喉」すなわち喉頭緊張を伴うことを表す。
平声:クセ無し。緩降調:*31(声母清音);低平調:*11(声母濁音)
仄声:クセ有り。
上声:高昇調、緊喉、短め:*’35
去声:低昇調、やや長い:*24
入声:短促調:*4(声母清音):*2(声母濁音)
出典 平山久雄「唐詩の韻律――漢文訓読の彼方――」(『東京大学中国語中国文学研究室紀要 19』pp.183-201, 2016年11月)p.191
李白や杜甫の時代の中国語のアクセントのあがりさがりは、どんな感じだったのか。学者によって、推定はまちまちです。諸説を最大公約数的にまとめると、…
平声はフラットで力をこめずに気楽な感じ。上声は高めで上がる感じ。入声はつまる音。
・・・・・・と、この三つについては極端な異論はありません。
問題は去声で、「下降調説」と「上昇調説」という、正反対の二つの説があります。
李白や杜甫の時代の去声のアクセントのあがりさがりは、どんな具合だったのか。現代の北京語の「第四声」と同様に上から下にさがる下降調だった、と推定する学者もいれば、その反対に、下から上にあがる上昇調だった、と推定する学者もいます。
平山先生は後者です。わたしは音韻学にも音声学にも疎いのですが、その方面の学者が書いた論文や著書を読むと、個人的には「李白や杜甫の時代の去声は、やっぱり、上昇調だったろう」と思っています。推定の根拠は、上掲の平山先生の論文をご覧ください。
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