桐野 作人 (著),‎ 則村 一 (著),‎ 卯月 かいな (著)『村田新八』
(洋泉社 ISBN-13: 978-4800314178)pp.175-181
「「手風琴伝説」の真相」より 内容のメモ

 村田が死の直前まで軍中で「風琴」を弾いた話は、各種の時代小説や、テレビドラマ「田原坂」(1987)、大河ドラマ「翔ぶが如く」(1990)にも出てくる。

 この元ネタは、明治40年代にできた『西南記伝』の中の「村田新八伝」だが、そのまたさらに元ネタとなったのは『岩崎洞中記』(1894)である。

 村田がヨーロッパから風琴を持ち帰って弾いたのはおそらく事実で、その楽器は遺品として二男の家に伝わった。

 ただし、村田が西南戦争の戦場でも風琴を弾いたという話は『岩崎洞中記』(1894)が初出であり、西南戦争を実際に目撃した人々の日記や筆記記録では確認できない。

 また、村田が弾いた「風琴」がどういうタイプの蛇腹楽器だったのかは、わからない。アコーディオンだったかもしれないし、伊東潤『武士の碑』に描かれたようにコンサーティーナだったかもしれない。

 いずれにせよ、西洋の楽器を日本に持ち帰り自分で弾くほど西洋音楽を愛した人物は、このころ洋行した日本人では村田新八くらいであった。